Bonjour ! 胡桃です。場所について使われるloin、実は日常的に人や物事にも使われ、なかなかに便利な副詞です。日本語の意味とまさに「遠からず」。用法を知っておくと自分の考えを伝えるのに役立ちます。
sommaire/目次
遠いばかりじゃない副詞 loin
フランス語の “loin ロワン“, 最初に習ったのはフランス語で道の尋ね方が出てきたときではないでしょうか。
地図を広げている観光客に現地の人がどこに行くのかと親切に声をかけ
Où allez-vous?
郵便局を探しているんです
Je cherche la poste.
行き方を教えてもらい、最後に「遠いですか?」と聞きます
C’est loin?
いや、すぐそこですよ
Non, c’est tout près.
私のテキストではこんなやりとりでしたが、このときの loin は形容詞的に使われている用例で、物理的な距離を表すものでした。
しかし副詞 loin にはそれだけではなく、えっ?こんなときに使われるんだわ〜と感動さえ覚える表現があります。
loin がどんなシチュエーションで使われるのかを知っておくとフランス語での表現の幅がグンと広がりますので、わかりやすい例でご紹介しますね。
trop loin:あんたひとりだけズレてるよ
文法は【 loin de, pas loin de 】
この表現が使えるシチュエーションの例
何人かで一斉に同じことをするときに、誰かひとり、間違えていたりテンポが遅れていたりするとします。
上の画像はパリ・オペラ座バレエのラ・バヤデールより “影の王国” 。
インドの戦士ソロルが巫女である恋人ニキヤを裏切って死なせてしまった悔恨からアヘンを吸い、恋人の面影と32人の精霊たちがヒマラヤから降りて来る夢を見ます。
この場面では32人のダンサーが動くテンポも手の高さも足の高さも同じアラベスクで坂を降り、一糸乱れぬ群舞を踊り抜きます。
リハーサルはとても厳しく、たったひとりのちょっとしたズレに、ときのバレエ・マスター、パトリス・バールさんからダンサーのサブリナさんに指摘が飛びます。
そのときのひと言が
Tu t’es trompée d’une ligne quelque part Sabrina, tu étais une ligne trop loin!
ひとことで言うと、「サブリナ!32人の中でひとりだけハズれてるぞ〜!!」
trop loin は
「他の皆んなからすごく遠い」 つまり 「32人中ひとりだけズレてる、皆んなと合ってないぞ〜っ!」という意味に。
trop は本来はこのようにネガティヴな意味合いで使われます。(最近は日本語と同じく、可愛すぎ、のような表現が普通になっていますが、書き言葉では避けたいところです)
une ligne は 「32人が一つの動きをすること」を指しています。
稽古場で言われたらショックだな〜。でもすぐ使えるフランス語だわ
こんな表現を聞くとフランス語って合理的っていうか、意外と便利で面白い
「ズレてる」「違う」を和仏で引いても日本語は言葉の意味が多様化しすぎていて、フランス語とはなかなか表現が一致しないものの一つです(´゚д゚`)
pas très loin と pas plus loin の違い
「周辺」のようなニュアンス、他に選択肢がある状況
- pas loin ⇨ 遠くない、違わない
- pas très loin ⇨ 近い
ほぼ同じようなもの
pas plus loin
pas に plus がつくことで、遠かった物事が近くに着地するニュアンスです。
日本語では霞がかかったような、曖昧さは拭い切れない感じもしますが、フランス語では湾曲な表現を使いながらも実は物事をはっきり伝えているようで、とても興味深いですね。
plus loin さらに遠くへ
同じく、ラ・バヤデールのリハーサルビデオでパトリス・バールさんがインタビューに答えているときに、今度は plus loin が聞こえて来ました。
この表現が使えるシチュエーション
バレエ ラ・バヤデールは主役ニキヤがソプラノ、恋敵ガムザッティがメゾソプラノ、19世紀のオペラの登場人物さながらです。
パトリス・バールさん
On va aller même plus loin, c’est réglé comme un opéra
このセリフの ” plus loin “ は
「(音楽とマイム、振り付けがぴったり一致する)オペラのごとくの高いレベルを目指す」。
より高みを目指す、というニュアンスです。
日本語とフランス語の表現の一致にも
大好きなバレエがきっかけで覚えた表現ですが、私の日仏レッスン中にもこのように。
日本語とフランス語が一致せずとも違わず、というときなどに pas loin, pas plus loin でうまく伝えられます
互いの国の習慣や社会の接点を見つけてはこのように
“Ce n’est pas loin du Japon”
日本と同じような感じです。
と言ったりしています(o^^o)
loin、便利に使えると言うのは語弊がありますし、辞書では使い方が難しそうに並んでいる単語ですが、どんなときに使うのかを感じて・・・語学学習はこんな楽しみに尽きますね。
loin の表現を知れば使い方はpas loin du japonais ! 日本語と近くて面白いわ
ラ・バヤデールでフランス語に触れてみたい方は
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現在は中古のみですが、ダンサーズドリームシリーズの中でも内容もフランス語学習にもイチオシです
Merci et à bientôt !
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