怒られてるのかと思ったら
駐輪してあった自転車に戻って帰り支度をしていたとき、背後から「マダム!マダム!」と女性のデカイ声がする。周囲を見渡すと私以外に人はいなくて、私を呼んでいるのだとわかった。
振り返ると、女性が車の窓越しに私に何か言っているので車に近づくと、「手袋落ちてるわよっ!」と。
足元を見たら日本から持ってきた軍手が片方落ちていて、それを運転中に私に必死に教えてくれていたというわけ。
優しいなあ。有難いなあ。人のことでこんなに一生懸命になる国民性。情けが熱いフランス。私も人にありがとうと言われる行動を心がけようと思うのです。
ゴミ収集車が私の横で止まった。どきっ。私何かしたかな?
その日はスーパーでどっさり、備えのための買い物をした。瓶類、水のペットボトル、お米に塩、小麦粉、鳥の餌など、自転車に積むには重すぎる荷物となってしまった。ともすればちょっとの坂で自転車がひっくり返ってしまう、うかうかと停車できない重さだ。
駐輪場を出るときに、とにかく自転車が傾くことのないように気をつけないと、と気を引き締めた。
走り出してしばらくすると、後ろから大きな車が私を追い越せないでいる様子。ミラーを見ると巨大なゴミ収集車だ。私はゴミ屋さんの車を先に行かせようと、迷わず端に避けた。
すると、止まっている私の真横にゴミ屋さんの車も止まったではないか。同時にすごい匂いもしてダブルでびっくりした。
そして車の窓から私に何か言っている。声の方を見上げると、男性が3人乗っていて、運転している方が「バスケットにすごい荷物だ、自転車が倒れないように気をつけなさいよ」と。
食料○が来るやもしれないひと筋の不安と緊張、重い荷物を積んでる緊張。そんな折に、親のように優しい言葉をかけてくれる人がいる。
私は出来るだけ明るい声で「優しいお言葉をありがとう!お気をつけて、良い一日を!」と言い、涙が溢れた。
今でも同じ道を走る度に思い出す一コマです。
無事に家について、高い運転席から自転車のバスケットの荷物が車高の高い運転席からどんな風に見えるか見てみたら、何から何までよく見えるわと笑ってしまった。
人間て、いいな。
前回の記事でも書きましたが、私が住んでいる辺りやフランスの地方では多くの人が子ども時代に自転車を足としています。それだから、自転車族の大変さをよくわかってくれるのでしょう。それにしても、優しいです。人情なんて、まだ日本で生きてる言葉かしら?
私がこんな風に、地元の車と幸せに走っていることを、車を運転する周囲の人に話してもまるで信じません。車同士はフランスの御多分に洩れず、イライラカッカすることばかりでしょうから無理はないと思います。けれども実は弱いものに優しい。
人間っていいな。フランスに来て感じることです。
日々、自転車同士はもちろんのこと、道で行き交う人とBonjourを交わして明るい気持ちで過ごしています。日本人の自転車族、どんなにか目立つんだろうなあと思いながら。
Merci et à bientôt !
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